ユースによる海洋ゴミ対策キャンペーン

数人から100人単位まで対応!清掃活動完全マニュアル

0.はじめに

このマニュアルを手に取ってくださったあなたへ

 なぜゴミを拾う必要があるかについては理解されていると思います。きっと何らかの清掃活動を企画・運営する責任を持っていて、何かの参考になればと手に取っていただいた方が多いのではないでしょうか?

 このマニュアルは、清掃活動の効果を最大化するためのヒントをまとめたものです。具体的には、「いかに社会にインパクトを与えるか?」「いかに参加した人の学びや、今後の行動変容に繫げるか?」の二点にフォーカスしています。

 私たちは25年以上、大学生を中心に地域の人たちを巻き込みながら、多摩川・千葉県九十九里浜・山形県飛島・新潟県佐渡島・長崎県対馬などで清掃活動を実施してきました。そこでの試行錯誤についてまとめるともに、清掃活動をしている様々な団体にインタビューして、このマニュアルを作成しました。

 そして、活動された皆さんからのご意見やアイデアをいただいて、さらにアップデートしていきたいと考えています。ぜひ、メールでフィードバックを送ってください。

このマニュアルを作成した団体について

 1993年に設立された大学生中心のNPO。現在、90大学3,500人の大学生が所属しています。国際協力・環境保護・地域活性化・災害救援・子どもの教育支援の5分野で様々な事業を実施しています。環境保護分野では、清掃活動のほか外来種駆除や森林整備などの活動をしています。

https://www.ivusa.com/

1.企画作りと清掃準備

■まずは全体の枠組み作り

 このマニュアルを読んでおられる段階では既に決まっていることが多いとは思いますが、まず、いつ・どこで・何人くらいの清掃活動を実施するのかということを決めます。

 その上で、その活動の「目標」を決めるわけですが、ゴミの量や参加者のモチベーション(活動への参画意識の度合い)などを考慮しましょう。例としては、「○○の地域のゴミをすべてなくそう」「ペットボトルを○○本拾おう」「参加者全員に楽しんでもらおう」…などが挙げられます。

 もちろん、複数の目標を立ててもいいですが、優先順位は決めておきましょう。この優先順位が活動の中で具体的に何をするのかの判断基準になります。

■行政や他の団体の巻き込み

 清掃する場所を管轄している役所(市町村・海岸管理者)にまず相談しましょう。ゴミを拾ってはダメと言われることは基本的にありませんが、拾ったゴミをどう処理したらいいかを確認することが必要です。清掃用具やゴミ袋を貸してもらえることも多いです。大人数で大量のゴミを拾う場合は、ゴミの運搬方法が問題になることもあります。

 活動するのが初めての地域では、すでに活動している団体に相談するのも大切です。その地域で清掃する場合に気を付ける点を聞いておきましょう。

 また、参加者を募集したり、協賛を得たりするために他の団体や企業などに呼びかけることがあるかと思いますが、その地域の市区町村や場合によっては都道府県の後援名義を取ると比較的話を聞いてもらえる確率が上がります。後援名義の申請については、市民の清掃活動を所管している部署が役所にありますので必要な書類等について相談してみましょう。すぐに後援名義が出るわけではありませんので、申請はお早めに。

 そして、大規模な活動を継続的に実施してくことを考えれば、自分たちの団体だけで活動するのではなく、行政や他の団体・企業などと「実行委員会」形式で進めていくのも一つの方法です。調整事項や事務作業が多くなりますが、その分社会へのインパクトが大きくなります。

2.参加者のリクルートと情報発信

 とにもかくにもゴミを拾う人がいないと活動が成立しないので、参加者をリクルートします。当然ですが、ボランティア保険ないし、行事保険の加入は忘れずに。

■チラシの作成

 チラシを見て来るという人は実際それほど多くはないのも事実ですが、行政や他団体に説明する際には必要ですので簡単でもいいので作成しておきましょう。

■ウェブサイトやSNSでの情報発信

 今の参加者リクルートの主力です。Facebookのイベントページの作成、Twitterでの拡散などは当然ですが、大切なのはシェアされやすい(共感されやすい)内容にすることです。運営層がどんな人たちで、どんな思いで活動しているのかを伝えたり、コメントやシェアしてくれた人に積極的に絡んでいったりしましょう。

 また、運営層の中でSNSに載せる際にハッシュタグをどうするか決めておきましょう。

■プレスリリース

 特にユースの場合、「新聞を見て来る」ということはあまりありませんが、「新聞をはじめとするメディアで取り上げられた」ということをSNSで発信することで、運営層のモチベーションや活動の社会的信用性アップにつながります。

3.事前学習・オリエンテーション

 参加者が集まったら、その人たちにどんな準備をしてきてもらうかを考えます。

■勉強会の実施

 ゴミ問題への理解を深めるとともに、清掃する場所の風習や文化、歴史等も学ぶ勉強会を実施します。可能なら、参加者にも自分たちで調べてきてもらい発表してもらうようにしましょう。事前に参加者同士で顔見知りになっておいてもらうことも重要です。

 勉強会に参加できない人にも、最低限知っておいて欲しい内容は事前に流し、感想や質問を聞いておきます。

■個人目標の設定

 活動に際して、それぞれ個人目標を設定してもらいます。考えるだけでなく、他の人の前で発表してもらう機会を作りましょう。

■注意事項や持ち物の周知

 あまり長文になると、そのままスルーされることがあるので、注意事項は箇条書きでシンプルに。持ち物も「絶対に必要なもの」と「あったらいいもの」に分けて伝えましょう。

4.清掃活動の実施

■開会式

 主催者の挨拶+来賓の挨拶+注意事項の説明が基本。主催者の挨拶は長くなり過ぎないようにしましょう。メディアに取材に来てもらう場合は、開会式が一番適切です。

■チーム・ビルディング

 大規模な活動の場合は、グループに分かれて清掃してもらいます。グループにはリーダーをあらかじめ立てておき、最初は自己紹介をしてコミュニケーションを取りながら活動するようにしましょう。グループリーダーは、安全管理の責任もありますので、自分が清掃をすることに熱中するのではなく、グループ全体に目を配るとともに、サブリーダー的な人を立てて安全管理を任せるなどしてください。

 事前にリーダーを立てられない場合は、その場でリーダーにやってもらいたい事項を箇条書きにしたものを渡してお願いするようにします。

■安全管理

 暑い時期でも、ケガ防止のために、半袖や半ズボンなどの服装やサンダルは避けましょう。また、海岸には危険なごみが漂着していることがあります。危険なものや良く判らないごみは触らないように徹底してください。

 そして、水辺や岩場、波打ち際などは足元が不安定で滑りやすいので、不用意に近づかないように伝えましょう。万が一、ケガした場合もすぐに対応できるように、単独行動をしないようにさせることが大切です。

■体調管理

 暑い時期は熱中症が最大のリスクになりますので、こまめに休憩を取るようにしましょう。日陰になる休憩場所やトイレの確認や確保も忘れないようにしましょう。

■ゴミの分別と量の確認・調査

 ゴミの分別方法は、ゴミを処理する自治体によって違うので必ず確認し、それに従うようにしてください。

 ゴミを拾うだけでなく、どのようなゴミがどれだけあったのかを調査することも重要です。

■写真・動画の撮影

 各グループで写真を撮る担当を立てておきましょう。ゴミを拾う前と拾った後のビフォーアフターの写真も忘れずに。最初か最後に参加者全体で写真撮影してもいいでしょう。

■閉会式

 全体の成果発表と、参加者に対する感謝の言葉を忘れずに。

 参加者の何人かに感想を言ってもらうのも効果的です。

5.フォローアップ・事後処理

■ウェブサイトやSNSでの情報発信

 迅速に実施しましょう。

■参加者へのSNSでの発信の促し

 共通のハッシュタグを付けてもらうと効果的です。

■行政や地域関係者への報告

 行政の場合は所定の書式に則って報告しましょう。

■協賛・助成してくれた団体へのお礼と報告

 まずはメール等で無事に終わったことの報告をしておきましょう。

■運営メンバーでのふり返りと申送書の作成

 運営したメンバーでふり返りのためのミーティングをもって、必ず次回への申し送り書を作成します。ともすると、反省のみにフォーカスしがちなので、成果の部分をまず共有するようにしましょう。